ついにsalyuの凄さに時代が追いついてきたような感じで嬉しいです。先日リリースされた最初のベスト盤の発売記念レビューとして、このアルバムを取り上げたいと思います。この人ははっきりいって、デビュー当初から不遇だったと思うから。彼女のことを知るようになった人の多くは、ここ数年だという人が多いと思うんですが、デビューから既に8年経っています。7年目にようやく花開いたアルバムがこのTERMINALなわけですが、これが彼女の2ndアルバムだという事実と、まして1stアルバムがデビューから5年経っていることなどはあまりにも不自然です。それは彼女の音楽活動を阻む大きな壁が存在したからなのです。
TERMINAL / Salyu
01.トビラ
02.風に乗る船
03.鏡
04.プラットホーム ~Merry Go Round~
05.故に
06.Tower
07.Apple Pie
08.I BELIEVE
09.夜の海 遠い出会いに
10.name
11.be there
12.heartquake
13.to U(Salyu ver.)

彼女を5年間も拘束したのは、皮肉にも彼女自身でした。それが、いわゆる覆面歌手としての「Lily Chou-Chou」でした。それは、岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」という映画のためだけに、小林武史とともに創作した架空のカリスマ・アーティストというだったわけです。彼女が最も不幸だったのは、この映画が終わっても、彼女だけがリリィという役を終えることが許されなかったということです。リリィは虚像でも、その音楽だけが現実であったことが、salyuとしての音楽性を制限するという奇妙な結果を招いてしまったのです。

そうしたメビウスの輪のような所から解脱した今作は、まさにsalyuがリリィを超えた(破壊した)という事実でその奇妙な関係に終止符を打ったと言えると思います。新生salyuを強く感じさせた、06.Towerから作詞を一青窈が提供するようになったり、ミスチルの桜井和寿と小林武史の企画バンドで共演した13.to U(Salyu ver.)など、他のアーティストからの影響が彼女を変えたと思います。それでも天性の歌声だけは不変だったことを再確認したのが、映画「地下鉄(メトロ)に乗って」の主題歌、04.プラットホーム ~Merry Go Round~で、salyuがsalyuであることを、その名前とともに多くの人に知らしめた名曲です。

最後に、salyuを7年も拘束したリリイという存在も映画以上にリアルだったということなのでしょう。いや、本当は音楽だけ唯一リアルだったのかもしれません。つまり、当時天才といわれた岩井、小林両氏はプロデュースしていたつもりが、この声だけの役の女の子にプロデュースされていたというのが、あの映画のリアルだったのかも・・・

※salyu Official Web Site
http://www.salyu.jp/

※プラットホーム - salyu
http://www.youtube.com/watch?v=8yaesLBGRas

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