春の桜の季節になると必ず見るのが、この作品。別に松たか子の熱烈なファンという訳ではなく、これほどの優れた映像作品はなかなか無いから。この岩井俊二監督の短編映画は本当に素晴らしいです。映画としてはストーリーは単純ですが、(え?終わり?って感じですが。)それが逆に映像表現を豊かにしていると思います。簡単に言うと、最近、ショートストーリー仕立てのPVがありますよね?(ケツメイシのさくら等)もちろん、音楽がメインで映像が付いているというのがPVですが、これは映像がメインでストーリーが付いているという感じです。だから、この四月物語は約80分の主人公、楡野卯月(松たか子)のPVと言えると思います。

この映像作品の被写体として、まだ初々しさのある松たか子を選んだこともよかったと思います。四月から上京した女子大生という役柄にピッタリはまっていると思います。でもやはり特筆すべきは岩井俊二監督の映像表現。この映像にどこか温もりを感じるのは、敢えて古い手法で撮影しているからだと思います。例えば(デジタル)カメラの技術が進歩すると、焦点(フォーカス)はもちろん、光の量なども最適の状態を機械が判断してくれます。確かにキレイな写真になりますが、すごく昔に取られた写真(モノクロなど)の方が温かい感じがすることないですか?実際にどのようにして撮影されたのかはわかりませんが、監督の狙いは機械の技術でなく、単純に人の技術によって撮影することで、そういった温もりや懐かしさを表現したのではないかと思います。

それ以外にも、場面の切り取り方や映像が生み出す雰囲気とか、全てが計算されているのか、感覚的に生み出された結果なのかわからないものの、本当に素晴らしい作品です。今はDVDも出ていますので、ぜひレンタルしてみてください。映像や音楽に興味のある人にはすごくオススメです。ストーリー重視の人はやめた方がいいかもしれませんが。

最後に、このサウンドトラックでは松たか子本人がピアノ演奏で参加しています。また、この映画の撮影中に作られた松たか子のPV集で「film 空の鏡」というのがあります。AMAZONの受け売りではないですが、今回ばかりは本当にセットで買うのがオススメです。明日はその「film 空の鏡」のレビューをします。

※岩井俊二監督の公式HP「円都通信」
http://yentown.co.jp/

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